不動産の取得
不動産の取得価格
取得価格に含まれるもの
不動産の取得価格として含まれるものは、主に以下の項目です。
- 土地・建物の購入代金
- 建築費用
- 固定資産税・都市計画税等、所有にかかる税金
- 仲介手数料
- 土地の整備費用・建物の取り壊し費用
- 立退料
取得価格に含まれないもの
取得価格に含まれないものには、含んではいけないものと、含まないことを選択できるものがあります。
含んではいけないものは以下の通りです。
- 土地取得のための地元有力者への支払い(交際費となる)
- 予想外の問題解決のために支払われる住民補償金・公害補償金
含まないことを選択できるものは以下の通りです。
- 不動産取得税・登録免許税等、取得にかかる税金
- 登記関連費用(印紙税・司法書士報酬等)
圧縮記帳
圧縮記帳とは、不動産を取得する際に、一部の収益を取得額から取り除いて損金とすることです。
課税を繰り延べるために行われます。
例えば、不動産取得にあたって補助金をもらった際に、その収益に対して課税されることを防ぎます。
圧縮記帳を行った資産の減価償却は、圧縮後の価格に基づいて行われます。
不動産の保有
ライフサイクルコスト
ライフサイクルコスト(LCC)とは、建物の企画〜保守費用等の建築物の生涯に必要なすべてのコストのことです。
主に以下の4種類に分かれます。
- 企画設計費:用地取得関係費や設計費等、建物取得にかかる費用 ※土地代除く
- 初期建設費:工事・工事監理にかかる費用
- 運用管理費
・保全費・修繕費・改良費・運用費(水道光熱費等)等の直接経費
・一般管理費(公租公課・保険料・減価償却費等)等の間接経費 - 廃棄物処分費:解体や処分にかかる費用
企画設計費・初期建設費・改良費等は、会計上固定資産に計上されるため、減価償却の対象となります。
共益費原価
共益費原価とは、テナントが共同で利用する設備や施設の運営維持に必要な費用です。
主な共益費原価は以下の通りです。
- 設備人件費:機器の点検・保守等に係る人件費
- 保守警備業務費:機械警備・警備要員等に係る費用
- 清掃業務費:施設内の清掃・ゴミ処理に関する費用。専有部内の清掃費は共益費の対象としないことが一般的です。
- 維持管理費:メーカーや保守業者に機器のメンテナンス・修繕等の業務を委託する場合の費用
- 水道光熱費 等
減価償却
減価償却とは
減価償却とは、不動産を購入した際に、購入費用を資産ごとに定められた耐用年数で、分割して計上する方法です。
購入費用を分割で計上させることで、利益の帳尻合わせのために資産の購入を行い、税金逃れをすることを防ぐことができます。
減価償却の方法
減価償却の方法は主に二つあります。
- 定額法:毎期均等額の減価償却費用を計上する方法
- 定率法:毎期の期末の償却残高に一定の率を乗じた費用を計上する方法
定額法は毎期の費用が読みやすく、定率法は後期にかけて費用が減っていくというメリットがあります。
税務上、届出をしていない場合は法人の場合は定率法によって、計算することとされています。
ただし、平成10年4月1日以降に新規取得した物件は、税務上定額法によって計算することとされています。
なお、減価償却は資産を取得した時点ではなく、事業の用に供した時点から行う必要があります。
減価償却の期間
減価償却の期間は法定耐用年数によって定められます。
建物の法定耐用年数は以下の通りです。
- 事務所等:SRC造50年、S造38年
- 住宅・学校等:SRC造47年、S造34年
- 飲食店・映画館等:SRC造41年、S造31年(3割以上木造の場合:SRC造34年、S造31年)
- 店舗:SRC造39年、S造34年
- 旅館・ホテル等:SRC造39年、S造29年(3割以上木造の場合:SRC造31年、S造29年)
- 病院:SRC造39年、S造29年
建物附属設備の法定耐用年数は以下の通りです。
- 昇降機設備:17年(エスカレーター:15年
- 電気設備:15年(蓄電池:6年)
- 給排水・衛生・ガス設備:15年
- 間仕切り:15年(簡易なもの:3年)
- 消防設備:8年
不動産の処分
資産の評価(低価法・原価法)
資産は、基本的には時価によって評価します。
一方で、棚卸資産(販売用に取得した不動産)については、時価以外の評価方法が認められています。
具体的には、以下の2種類です。
- 原価法:原則、取得時の価格で評価。時価が取得価格の50%を切った場合、強制的に時価に評価を切り下げる方法。
- 低価法:取得価格と時価を比較し、低い方の価格で評価する方法。
減損処理
減損とは
減損とは、不動産の収益性が低下している場合に、資産の価値を減少させ損失を計上することです。
例)1億円の不動産を購入したが、現在の価値は3,000万円程度まで下落している場合。
→1億円で計上していた資産を3,000万円に減らし、減損損失として7,000万円を計上する。
減損の処理手順
- 減損の兆候有無の判断
収益が継続して赤字の場合や、市場価格の著しい下落(50%以上の下落)が見られるか - 減損の認識
資金を回収できる可能性が低いか
(将来生み出す利益より、帳簿価格の方が小さい状態か。
=割引前将来キャッシュフロー > 帳簿価格) - 減損損失の測定
売却価額か、将来生み出す利益のいずれか高い方を、回収可能価格とします。 - 減損損失の計上
特別損失として計上します。
減損処理後
会計上の減損損失は、そのままでは税務上の損金とは認められず、法人税法上損金不算入の扱いとなります。
よって減価償却は、減損処理後も帳簿価格を基準として毎期行われます。
除却
除却とは、不動産の使用を中止して、帳簿から取り除くことです。
会計上の除却時の処理は以下の通りです。
- 残存簿価を除却損として計上(取壊し費用等も含む)
- 残存簿価を除却債務として負債計上し、除却費用として資産計上
- 除却費用は減価償却を通じて、残存耐用年数に渡り各期に配分
残存簿価の算定は、割引前将来キャッシュフローで見積もり、割引後の金額で算定します。
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