投資判断
不動産の投資判断は、投資指標となる特定の価格を求めることによって、それぞれの不動産を比較できる状態にする方法があります。
収益還元法
将来的に生み出される利益から逆算して、価格を求める方法です。
『将来生み出すと期待される純収益の現在価値を合算して、不動産価格を求める手法。』
- 純収益:年間の収入(家賃等)から経費(修繕費・税金等)を差し引いたもの
- 現在価値:将来得られる収益を現在受け取れるとしたら、どれくらいの価値になるかを算出したもの
収益還元法には、さらに以下の2種類があります。
直接還元法
対象の不動産から生み出される1年間の利益と、周辺相場等から想定される利回りを比較して、不動産価格を求める方法。
1年間の利益を想定される利回りで割ることによって、計算されます。(=純収益/利回り*100)
※利回り:投資した金額に対して、毎年どのくらいの純収益が得られるか計算したもの
(=純収益/投資金額*100)
例)年間の利益が100万円の渋谷の賃貸マンションを購入。
渋谷の賃貸マンションの利回りの相場が1%の場合、不動産の価格は以下の通り。
- 不動産価格:100万円/0.01=1億円
DCF法
Discount Cash Flow
将来生み出すと期待される1年間の純収益を現在価値に直して、将来の売却価格(復帰価格)と全て合算し、不動産価格を求める手法。
- 純収益→現在価値に直すとは
『純収益を現在価値に直す』とは、将来もらえるお金の価値を、現在もらえるお金の価値に変換することです。
例)銀行の預金利率が年1%の場合
1年後の100万円=現在の990,099円(=1,000,000円/(1+0.01))
このケースにおける銀行預金利率のことを、割引率といいます。
また、『純収益を現在価値に直したもの』を、割引現在価値といいます。
- 不動産価格の求め方
不動産価格は、各年割引現在価値の総額であり、以下の式によって求めることができます。
{純収益/(1+割引率)}+{純収益/(1+割引率)^2}+{純収益/(1+割引率)^3}+•••+{純収益/(1+割引率)^n}
例)年間の収益が100万円の渋谷の賃貸マンションを購入し、5年後に500万円で売却予定。
銀行の預金金利相場が1%の場合。
受取時期 | 割引現在価値 |
1年後 | 990,099 |
2年後 | 980,296 |
3年後 | 970,590 |
4年後 | 960,980 |
5年後 | 951,466 |
売却価格 | 5,000,000 |
不動産価格 | 9,853,431 |
不動産価格は、985万円(毎年の純収益485万円+売却価格500万円)と想定されます。
DCF法を用いて投資判断を行う場合、投資金額から
IRR法
原価法
不動産を建設する際に積み上がったコストから、価格を求める方法です。
対象の再調達原価を求め、減価修正を行い、不動産の積算価格を求める手法。
計算式は以下の通りです。
積算価格=再調達価格*延床面積*(残耐用年数/耐用年数)
- 再調達価格:今既に建っている建物を取り壊したと仮定して、同じ建物をもう一度建てたときにいくら費用がかかるのか、計算した価格のこと
- 減価修正:設備が老朽化している部分について、差し引くこと
- 積算価格:土地と建物の価格を計算して足した価格のこと
取引事例比較法
条件が近い不動産の過去の取引事例に着目して、価格を求める方法です。
『多数の取引事例を収集し個別要因の比較を行い、不動産の比準価格を求める手法。』
計算式は以下の通りです。
比準価格=取引事例の価格*事情補正*時点修正*標準化補正*地域要因比較*個別要因比較
- 事情補正:所有者の事情によって「安く買われてしまった」等の特別な事情を補正
- 時点補正:過去の取引時点と、評価を行う時点が異なっていた場合に行う補正
- 地域要因:道路状況・周辺施設の環境等、地域格差を補正
- 個別要因:土地の広さ・形・日当たり等、個別事情を補正
賃貸判断
不動産を新しく貸す時、または契約更新の時『賃料はいくらに設定すべきか』判断する方法について解説します。
賃料の種類
不動産の評価を行うとき、賃料は主に以下の3つに分けることができます。
- 正常賃料:マーケットで成立する合理的な賃料
- 限定賃料:特定の人とだけで成立する賃料
- 継続賃料:既存の賃貸借契約が存在し、特定の人とだけで成立する賃料
継続賃料は最もマーケットの変動の影響を受けづらく、賃料の求め方が異なります。
1・2を新規募集賃料、3を継続賃料として、賃料の設定方法を記載します。
新規募集賃料
新規募集した際に設定する賃料の算出方法は、以下の3種類あります。
積算法
不動産が持つ経済価値(基礎価格)に着目して、賃料を求める方法です。
計算式:基礎価格×期待利回り×諸経費
基礎価格は、原価法(建設費用等のコストから価値を算出する方法)等を用いて求めることができます。
賃貸事例比較法
周辺にある似通った条件の賃貸物件の家賃相場と比較して、賃料を求める方法です。
収益分析法
その不動産を利用することで、入居する企業がどのくらい収益を生み出せるかという観点から、賃料を求める方法です。
継続賃料
差額配分法
新規募集賃料と現在の賃料の差額に着目して賃料を求める方法です。
差額分を何割か現在の賃料に加算(減算)し、計算します。
利回り法
現在の賃料の額が、その賃料を決めた時の土地価格に対して、どのような利回りだったか、に着目して賃料を求める方法です。
現在の土地価格に対して、賃料を決めた当時の利回りをかけることで求めることができます。
計算式:基礎価格×期待利回り+諸経費
スライド法
賃料に影響を与えているであろう様々な「価格の指数」の変化を考慮して、賃料を求める方法です。
例)消費者物価指数、サービス価格指数