概要
建築基準法とは、建物を建てる際の敷地・構造・設備等に対する、最低基準を定めた法律です。
定められる規定は以下の2つに分類されます。
- 制度規定:手続きや罰則等に関する規定
- 実態規定:建物自体に関する規定
建築規制
用途制限
用途制限とは、類似している用途の建築物を一定の地域に集約することで、地域にふさわしい環境の形成を行うための制限です。
用途の詳細については、以下の都市計画法の記事をご参照ください。
診療所 | 住宅 | 大学・病院 | 店舗 | 事務所 | カラオケ | ホテル | |
第一種低層 | ⚪︎ | ⚪︎ | × | × | × | × | × |
第二種低層 | ⚪︎ | ⚪︎ | × | ▲ | × | × | × |
田園住居 | ⚪︎ | ⚪︎ | × | ▲ | × | × | × |
第一種中高層 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ▲ | × | × | × |
第二種中高層 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ▲ | ▲ | × | × |
第一種住居 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ▲ | ▲ | × | ⚪︎ |
第二種住居 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ |
準住居 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ |
近隣商業 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ |
商業 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ |
準工業 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | × |
工業 | ⚪︎ | ⚪︎ | × | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | × |
工業専用 | ⚪︎ | × | × | ▲ | ⚪︎ | ⚪︎ | × |
なお、都道府県知事または市町村長は、公聴会の開催・建築審査会の同意を経ることで、用途規制を解除することができます。
建蔽率制限
建蔽率とは、敷地面積に対する建築面積(建物を上から見た時の面積)の割合です。
敷地目一杯に建物を建てることは、防火・住環境上望ましくないので、用途地域ごとに建蔽率の制限が定められています。
ただし、以下の場合は緩和要件が設定されています。
- 防火地域・準防火地域:10%緩和(ただし建蔽率80%の地域は20%緩和)
- 特定行政庁指定の角地等:10%緩和
容積率制限
容積率とは、敷地面積に対する延べ面積(建物全ての面積)の割合です。
容積率は用途地域ごとに制限がかけられています。
前面道路が12m未満の場合は、以下の2つの内小さい方が限度となり、更に制限がかかります。
- 都市計画で定められた容積率
- 道路の幅員*法定乗数
法定乗数:住居系用途地域は4/10、その他の地域は6/10
なお、前面道路が12m未満の場合でも、以下の2つ要件を満たせば、70m以内の敷地についてのみ緩和措置を受けることができます。
- 前面道路が6m以上
- 15m以上の道路に接続する
高さ制限
通風・日照権等の確保を目的として、用途別に高さの制限が設定されています。
絶対高さ制限 | 道路斜線制限 | 隣地斜線制限 | 北側斜線制限 | 日影制限 | |
第一種低層 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | |
第二種低層 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | |
田園住居 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | |
第一種中高層 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | |
第二種中高層 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | |
第一種住居 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ||
第二種住居 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ||
準住居 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ||
近隣商業 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ||
商業 | ⚪︎ | ⚪︎ | |||
準工業 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ||
工業 | ⚪︎ | ⚪︎ | |||
工業専用 | ⚪︎ | ⚪︎ |
天空率制限
天空率とは、ある地点から空を見上げたときの、建物の面積と空の面積の比率のことです。
天空とは、魚眼レンズで空を見上げた時のような球面上の天空のことを指します。
防火地域・準防火地域
防火地域・準防火地域とは、商業地や木造密集住宅地等、建築物の密集している市街地において、建築物の構造制限を規定した地域です。
防火地域・準防火地域内の建物は、規模や構造によって耐火または準耐火構造とする必要があります。
総合設計制度
総合設計制度とは、一定規模以上の敷地面積・一定割合以上の空地を持つ建物について、密度・形態等の制限を緩和する制度です。
建築敷地の共同化や大規模化を誘導するために、制定されています。
- 一団地の総合設計制度:複数の建築物が建つ一団の土地全体を、一つの敷地とみなす制度
- 連担建築物建築物設計制度:協調的な建築計画が策定された場合、複数の建築物を同一の敷地内にあるものとみなし、建築基準を適用する制度
検査規定
定期検査
建築基準法では、安全・防災・衛生等の観点から特に重要であるものに対しては、定期検査が義務付けられています。
検査者は、一級建築士・二級建築士・建築物調査資格証の交付を受けている人のいずれかに依頼する必要があります。
また、特に重要な検査については、写真や試験結果の概要資料の添付が義務付けられています。
検査内容
定期検査が必要な建物は用途・規模ごとに定められており、毎年報告が必要なもの・3年に1回報告が必要な者があります。
検査の対象となる設備は、以下の通りです。
①外壁タイル
打診・目視調査し、異常があれば全面打診等により調査します。
(外壁改修等から10年を経た場合は、全面打診等により調査。)
※打診:外壁を叩いた際の音の高低によって、目に見えない外壁の剥離有無を判断する検査
②換気設備・排煙設備
原則として全数検査し、換気状況評価表・換気風量測定表・排煙風量測定記録表を添付して提出します。
③防火設備
常時閉鎖・作動できるものを点検します。1年に1回報告が義務付けられています。
竣工検査
検査の流れ
建物が竣工した際の検査の流れは、以下の通りです。
- 監理者がいる場合は、自主竣工検査を行う
- 工事完了から4日以内に「工事完了届」を建築主事に提出する
※建築主事:建築物の審査確認・検査などを行う公務員 - 受理された日から7日以内に、建築主事による竣工検査が行われる
- 竣工検査で問題がなければ「検査済証」が交付される
検査内容
建築主事による検査は、主に以下の通りです。
- 建築・設備・附置義務駐車場・昇降機
- 電気受電関連検査(経済産業省管轄)
- 消防法関連検査(消防機関管轄)
- 食堂がある場合は食品衛生法関連検査(保健所管轄)