生命保険とは
生命保険は、家族に不測の事態があった際に、経済的に困窮しないための制度です。
基本用語
関係者
- 契約者:保険料の支払い義務のある人
- 被保険者:保険の対象となっている人
- 受取人:保険金等を受け取る人
お金
- 保険料:契約者が生命保険会社に払い込むお金
- 保険金:受取人に支払われるお金
- 解約返戻金:生命保険契約を解約したときに払い戻されるお金
- 満期保険金:保険期間の満期を迎えた時に保険会社から支払われるお金
期間
- 責任開始期:生命保険会社の契約上の責任が発生する時期
- 保険期間:保険が続く期間
- 保険料払込期間:保険料を払い込む期間
保険料計算
- 予定死亡率:死亡者数を予測し、将来の保険金支払に必要な額を算出するための数値
低いほど保険料は安くなる - 予定利率:運用によって得られる収益を予定し、あらかじめ割り引くための数値
高いほど保険料は安くなる - 予定事業比率:事業運営に必要な経費を保険料に組み込んだ数値
低いほど保険料は安くなる
生命保険の種類
保障ニーズに沿って商品を紹介します。
死亡保障
- 定期保険:保険金額が保険期間を通して一定の保険
- 逓増・逓減定期保険:保険期間中の保険料は一定で保険金額が増加または減少する保険。満期保険金はなし。
- 終身保険:保障が一生涯続く保険。貯蓄性が高い分保険料・解約返戻金が高くなっている。満期保険金はなし。
- 低解約返戻金型終身保険:解約返戻金が通常の終身保険より低く抑えられており、保険料払込満了時に、保険金が通常の終身保険と同程度になる保険。通常の終身保険より保険料が安くなっている。
- 定期保険特約付終身保険:一定期間の死亡保障を大きくした保険
- 養老保険:満期前に死亡した時には死亡保険金、生存していた時は満期保険金が支払われる保険。死亡保険金と満期保険金額は同額。貯蓄性が高い分保険料は高く解約返戻金も高くなっている。
医療保障
- 特定疾病保障保険:三大疾病(がん・急性心筋・脳卒中)で所定の状態になる、または死亡した場合に保険金が支払われる保険
教育資金準備
- こども保険・学資保険:子供の入学や進学に合わせて祝金(生存給付金)や、満期まで生存した場合に満期保険金が支払われる保険。親が死亡した場合は、以下の通り対応される。
- 保険料の払込が免除される
- 祝い金・満期保険金は契約通り支払われる
- 死亡給付金はなし
老後資金準備
- 個人年金保険:契約時に定めた年齢に達すると年金を受け取ることができる保険
年金受給開始前の死亡保障や解約返戻金を抑えて、将来もらえる年金額を増やす仕組み- 保証期間付終身年金:生存している間年金が支払われ、保証期間中に死亡した場合は残りの保証期間分の年金が遺族に支払われる保険。
- 期間終了後も保険料は支払われる
- 女性の方が平均寿命が長いため、男女によって保険料・基本年金額に差が出る
- 保険料:女性の方が高い
- 基本年金額:女性の方が低い
- 確定年金:被保険者の生死に関わらず、あらかじめ定められた期間だけ年金が支払われる保険。被保険者の死亡した時期によって、支払われる年金が変わります。
- 年金支払開始前に死亡した場合:既払い保険料に応じて死亡保険料が支払われます。
- 年金支払期間中に死亡した場合:残りの期間分の年金(または一時金)が遺族に支払われます。
- 有期年金:被保険者が生きている限り、あらかじめ定められた期間だけ年金が支払われる保険。確定年金より保険料は安くなります。
- 変額個人年金保険:資産運用の実績により、将来受け取る年金等が変動する保険。
- 年金支払開始前に死亡した場合:死亡給付金は運用実績に応じた金額が支払われ、既払込保険料相当額が最低保証されている
- 一時払型で契約後5年以内に解約した場合:20%源泉分離課税
- 保証期間付終身年金:生存している間年金が支払われ、保証期間中に死亡した場合は残りの保証期間分の年金が遺族に支払われる保険。
団体保険
- 総合福祉団体定期保険:企業で一括加入し、企業が保険料を負担する定期保険。
- 1年更新の契約
- 加入者ごとに約款の告知及び同意が必要
- 死亡保険金の加入限度額は、死亡退職金の範囲内で設定
- 団体定期保険:任意加入で、従業員が保険料を負担する保険
特約
特約とは主契約に付加して契約することにより、主契約の保障内容を充実させるものです。
保障ニーズに沿って特約を紹介します。
死亡保障
- 定期保険特約:定期保険を特約として主契約に付加するもの
- 災害割増特約:不慮の事故または特定感染症で死亡した場合、死亡保険金に上乗せして保険金が支払われるもの
- 傷害特約:災害割増特約の内容に加え、障害状態になったとき給付金が上乗せして支払われるもの
- 収入保障特約:死亡または高度障害になった場合に、保険金を年金形式で受け取るもの。一括受け取りも可能だが、受取総額は年金形式での受取総額より少なくなる。
医療保障
- 災害入院特約:不慮の事故で入院した時に、入院給付金が支払われるもの
- 疾病入院特約:病気治療を目的として入院した時に、入院給付金が支払われるもの
- 通院特約:入院給付金の対象となる入院をした後、その病気によって通院した場合に通院給付金が支払われるもの
- 成人病(生活習慣病)入院特約:五大成人病(ガン・脳血管疾患・心疾患・高血圧性疾患・糖尿病)の治療を目的として入院した時、入院給付金が支払われるもの。疾病入院特約と二重で受取が可能。
- 先進医療特約:先進医療の自己負担分をカバーする特約。療養時点で厚生労働大臣が承認した先進医療であることが条件。
その他
- リビング・ニーズ特約:余命6ヶ月以内と宣告された場合、生前に死亡保険金の一部または全部を前払い請求できるもの。請求可能金額は3,000万円まで。
- ヒューマンヴァリュー特約:総合福祉団体定期保険に付加する特約で、被保険者が死亡または高度障害となった場合に、企業が負担すべき経済的損失を補填するために、企業が保険金を受け取ることができるようにするもの
税金
生命保険に関わる税金を、保険料控除と保険金への課税に分けて紹介します。
保険料控除
生命保険料控除は所得控除の一つです。対象となる契約は以下の通りです。
- 一般の生命保険契約
- 変額個人年金保険等
- 個人年金保険料税制適格特約を付加した契約
- 年金受取人が保険契約者またはその配偶者である
- 年金受取人が被保険者と同一人である
- 保険料払込期間が10年以上ある
所得税における控除額は、最高12万円(生命保険料控除・個人年金保険料控除・介護医療保険料控除それぞれ最高4万円)住民税における控除額は、最大7万円(それぞれ2.8万円)です。
保険金への課税
死亡保険金は、夫・妻・子供からなる世帯の場合、以下の通り課税されます。
契約者 | 被保険者 | 受取人 | 課税される税金 |
夫 | 夫 | 妻 | 相続税 |
夫 | 妻 | 夫 | 所得税 |
夫 | 妻 | 子供 | 贈与税 |
満期保険金は、夫・妻からなる世帯の場合、以下の通り課税されます。
契約者 | 受取人 | 課税される税金 |
夫 | 夫 | 所得税 |
夫 | 妻 | 贈与税 |
毎年受け取る年金は、雑所得として所得税の対象となります。
なお、以下は非課税となります。
特定疾病保険金・リビングニーズ特約保険金・高度障害保険金・入院給付金等
会計処理
法人を契約者とする生命保険の場合、会計処理が必要となります。
生命保険の処理の原則としては、貯蓄性のないものは経費計上・あるものは資産計上です。
資産計上
養老保険や終身保険等の保険は、死亡保険金等の受取があり貯蓄性があるため、資産として計上されます。
保険料は保険料積立金として資産計上されます。
益金・損金算入
定期保険や医療保険等の第三分野の保険は、満期保険金がないものは、貯蓄性がないため経費として計上されます。
- 益金:死亡保険金・解約返戻金等の保険金等の差額(保険差益)を雑収入として益金算入します。
- 損金:保険料を損金算入します。
定期保険・第三分野の保険
2019年7月8日以降に締結された長期平準定期保険・逓増定期保険、2019年10月8日以降に締結した短期払いのがん保険は、最高解約返戻率に応じて、損金算入できる額が決められます。
- 50%以下の場合、保険料の100%を損金算入
- 50%超70%以下の場合、保険料の60%を損金算入、残りは資産計上
- 70%超85%以下の場合、保険料の40%を損金算入、残りは資産計上
解約返戻金のない医療保険
損金算入できる額は保険料の支払い方法に応じて決められます。
- 保険期間=払込期間の場合(全期払い)、医療保険料として保険料の100%を損金算入
- 保険期間>払込期間の場合(短期払い)
- 年間保険料が30万円以下の場合、医療保険料として保険料の100%を損金算入
- 年間保険料が30万円以下の場合、年間保険料*払込年数/(116歳ー加入時年齢)を損金算入
1/2養老保険
契約者が法人、被保険者が役員・従業員の1/2養老保険は、受取人によって経費処理が異なります。
- 死亡保険金の受取が被保険者(または遺族)、満期保険金の受取が法人の場合、50%を保険料積立金として資産計上、残りを福利厚生費として損金算入します。
- 死亡保険金及び満期保険金の受取が被保険者(または遺族)の場合、全額を給与として損金算入します。
- 死亡保険金及び満期保険金の受取が法人の場合、通常の養老保険と同様、全額を保険料積立金として資産計上します。
個人年金保険
契約者が法人、被保険者が役員・従業員の個人年金保険は、受取人によって経費処理が異なります。
- 死亡給付金及び年金の受取が法人の場合、全額を保険料積立金として資産計上します。
- 死亡給付金及び年金の受取が被保険者(または遺族)の場合、全額を給与として損金算入します。
- 死亡給付金の受取が被保険者(または遺族)年金の受取が法人の場合、90%を保険料積立金として資産計上、残りを福利厚生費として損金算入します。