不動産証券化とは

不動産証券化の仕組み

不動産証券化とは、不動産から得られる賃料などを裏付けとして、株式などを発行して投資家等から
資金を集める仕組みのことを言います。
例えば、オフィスビルを証券化してみると以下のイメージとなります。

上記のように、不動産を証券化して株式などを発行するためには、不動産を保有して株式を発行する
投資法人等の存在が必要となります。

この投資法人等は、不動産を証券化するためだけに存在するペーパーカンパニーが多いですが、
この媒体を総称してSPVSpecial Purpose Vehiecle)と言います。

SPVの詳細については、以下の記事をご確認ください。

不動産証券化のメリット

不動産証券化をなぜ行うか、メリットを解説します。

投資家にとって

投資家のメリットは、投資へのハードルが下がることです。具体的には、以下3点が挙げられます。

  1. 少額から投資できる(小口性が高い)
  2. 売買がしやすい(流動性が高い)
  3. 商品がわかりやすい(透明性が高い)

不動産証券化の仕組みができる前は、通常不動産に投資するためには、不動産を1棟選んで投資しなければなりませんでした。

不動産証券化の仕組みを使うことで、投資家は以下の図のように、様々な商品を組み合わせた不動産証券を、好きな金額で買うことができるようになりました。(→小口性)

また、不動産『証券』と言われているように、不動産証券は株式や債権と同様に、金融庁のルールの下で運用されています。

よって、証券化されたことにより、売買が投資家の意思で比較的簡単にできる(→流動性)、
商品の詳細を分かりやすく記載することが求められる(→透明性)という特徴があります。

不動産所有者にとって

所有者のメリットは、不動産の買い手が見つかりやすくなる点です。

不動産証券化の仕組みができる前は、不動産の所有者や買い手を見つけてくる金融機関(銀行等)は、
その不動産を欲しいと思っている買い手を見つけてくる必要がありました。

しかし、不動産証券化の仕組みを利用すれば、金融機関は他の所有者が持っている不動産を組み合わせて、投資家から少しづつお金を集めることができるようになります。

例)A社:オフィスビル2棟(利回り3%・5%)を所有しているが、買い手が見つからない
  B社:商業施設2棟(利回り1%・7%)を所有しているが、買い手が見つからない
  C銀行:利回り5%のオフィスと1%の商業施設を組み合わせた、不動産証券を作る
→不動産1棟の時よりも、少額・リスクの分散された商品になるため、買い手が見つけやすくなる

両者にとって

投資家・所有者両者にとってのメリットは、以下の2点です。

  1. 不動産にて利益が確保できていれば、SPVが倒産することはない(倒産隔離
  2. 一定の条件を満たせば、税金を軽減することができる(二重課税の回避

倒産隔離

不動産証券化における不動産の所有者は、SPVという不動産の運営のみを行うペーパーカンパニーであるため、所有者の本業に左右されないというメリットがあります。

不動産の運営が、所有者に左右されてしまう例を見てみましょう。

例)パソコン製造を行っているA社は、オフィスビル1棟を賃貸している。
・A社がビルの改装費用として、B銀行から1億円を借りたい場合
→A社の本業の収益力に基づいて、B銀行は金利等を定めて、A社に貸出をする
・A社が倒産した場合
→銀行は、A社の業績次第では1億円を回収できない場合がある。

A社が所有しているオフィスビルが、非常に収益力が高かった場合、
不動産証券化のスキームを使うことで、A社は有利な条件で借入ができるようになり、
B銀行は不渡を防ぐことができます。

A社の信用力をもとに、資金調達をすることをコーポレートファイナンス
オフィスビルの信用力をもとに、アセットファイナンスと言います。

二重課税の回避

不動産証券化のスキームでは、SPVとして様々な形態の法人を設立することが可能ですが、
SPVに法人税がかかってしまうと、不動産の収益に対する税金が二重に課されることになります。

  • SPVにおける法人税
  • 投資家の配当所得に対する所得税

この税金発生の回避策を『二重課税の回避』と言います。回避策は、2つの方式があります。

  1. 投資家への配当を損金にすることが認められているSPVを用いる(ペーススルー型
  2. 元々法人税が免除されているSPVを用いる(パススルー型

2つの方式の詳細は以下の記事にまとめていますので、ご参照ください。

まとめ

不動産は証券化されることにより、不動産そのもので売買するよりも、売りやすく・買いやすい商品になります。

また、倒産による不渡のリスクや税金の軽減を図ることができるというメリットもあります。

上記の理由から、不動産証券化市場は今後も拡大することが予想されます。

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